自分の歯を再生?インプラントに頼らなくてもよい時代の到来か

インプラント再生補綴学の研究

岡山大学は3月18日、炎症に関わる微量生理活性タンパク質(炎症性サイトカイン)への刺激によって、歯の神経の幹細胞(歯髄細胞)が分化前の状態に戻ることやその状態の維持に関わっていることを発見したと発表した。

内容は『Stem Cell Research & Therapy』で2月28日に論文として公開された。同大学大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)インプラント再生補綴学分野の窪木拓男教授らの研究グループによる成果。

(画像はニュースリリースより)

歯髄細胞の未分化性獲得と維持

研究結果は炎症性サイトカインの一つである腫瘍壊死因子-a(TNF-a)の一時的刺激が、歯髄細胞の未分化性獲得と維持に関与しているというもの。

適度な炎症環境が組織幹細胞の未分化性獲得や維持、炎症制御と密接な関係があり再生に強く関わる可能性があることは、組織再生の考え方に大きな影響を与えるといえる。

これまでは強い炎症環境はプログラムされた細胞の死を誘導するなど負の側面を持つことは知られていたが今回の結果は再生の準備への関与というまったく逆の発見。

組織再生にはさまざまなサイトカインによって創傷部位に組織幹細胞が誘導され重要な働きを担っていることが知られていた。研究グループの実験でも歯質切削等の刺激直後に歯髄腔に間葉系幹細胞が出現した。

そこでいくつかの炎症性サイトカインを用いヒト歯髄細胞を刺激したところ、短期間のTNF-a刺激時においてのみ歯髄細胞が骨芽細胞や脂肪細胞など他の細胞へ分化する効率が高まることが明らかとなった。

▼外部リンク

炎症性サイトカインが歯髄細胞の未分化性獲得と維持を誘導
http://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/soumu-pdf

発表論文
http://stemcellres.com/content/5/1/31/abstract