東北大学は12月9日、大学院歯学研究科口腔分子制御学分野の多田浩之講師らの研究グループが、歯周病菌は血管内皮細胞の創傷治癒を妨げることを発見したと発表した。
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歯周病の病原体であるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス、P.gingivalis)は、ジンジパインというタンパク質を分解する酵素を分泌し免疫に抵抗し、アルツハイマー型認知症の悪化に関係していることが判明している。
P.gingivalisはジンジパインにより赤血球のヘモグロビンから鉄分を摂取して増殖する細菌であるので、歯周ポケットの出血は好都合な環境になる。健康な状態であれば、出血すると血管内皮細胞はPAI-1というタンパク質を産生して移動し破れた穴を埋め血管を修復する。
研究グループは、P.gingivalisをヒト血管内皮細胞に感染させて歯周病を発症させ、血管内皮細胞による血管の修復程度を調べた。
その結果、P.gingivalisを感染させると血管内皮細胞から産生されるPAI-1タンパク質の量が顕著に減少し、ジンジパインを欠損させたP.gingivalisを感染させるとPAI-1は減少しなかった。また、ジンジパインはPAI-1をタンパク分解していることが分かった。
次に、血管内皮細胞の創傷をつくり創傷が治る過程を観察した。血管内皮細胞にP.gingivalisを感染させると血管内皮細胞の創傷治癒は遅くなり、ジンジパインが失活したP.gingivalisや欠損したものは通常の血管内皮細胞と同じ速さだった。
したがって、P.gingivalisが分泌するジンジパインは、PAI-1を分解することで血管内皮細胞の創傷治癒を妨げ、歯周病を悪化させる。さらに、血管から体内に侵入してアルツハイマー型認知症や心血管疾患など全身の病気を悪化させる可能性も考えられるとのこと。
(画像はプレスリリースより)
▼外部リンク
東北大学のプレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/
別掲
https://www.tohoku.ac.jp/web_tooth.pdf/