2016年8月17日、歯科用インプラントの施術後に発症する可能性のあるインプラント周囲炎を引き起こす、細菌群集の構造が明らかになったと国立大学法人東京医科歯科大学が発表した。
なお今回研究にあたったのは、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野和泉雄一教授及び、芝多佳彦大学院生そして武内康雄助教授による研究グループである。
インプラント周囲炎は複合細菌感染症により引き起こされ、インプラント施術を受けた日本人のうち約40%の者が発症するとされている。またその病態は一般的な歯周炎と類似している一方で、それよりも進行の早いことが治療を困難にさせているのだ。
そうしたことから、インプラント周囲炎治療の簡便化等に向けた研究が求められているのだが、口腔内における細菌種の多様性及び培養の難しさ等から先の目的に向けた研究としての、細菌叢解析は進まなかったのである。
そこで当該研究チームは、一般的な歯周炎もしくはインプラント周囲炎に罹患した12名の成人から、プラークを採取しそこに含まれる細菌RNAを取り出した。
その上で、それを次世代シークエンサーにかけることでそれのゲノム情報を得て、当該両疾患に関係する細菌の種類を特定し、それらの機能的及び病原的な遺伝子解析を行ったのである。
結果、まず細菌種の割合及び細菌ネットワーク網やより活発な機能遺伝子について異なる一方で、機能遺伝子についてはタンパク質や炭水化物の合成や分解に関する遺伝子が、より多く発現していることが明らかとなったのだ。
加えて、関連する病原遺伝子に焦点を当て比較したところそれらは類似しており、その反面健康である歯の周りにて見られる細菌叢との比較では異なる組成であることも、合わせて判明されたのである。
こうしたことから、両疾患に関連する細菌叢はバイオフィルムの維持におけるそれと近似しており、これが病態の類似性を引き出していることまた細菌種の違いが、両疾患間に対する治療の効果に差を生み出していると言えるのだ。
(画像はプレスリリースより)
▼外部リンク
プレス通知資料(研究成果)
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20160817_1.pdf