新たな歯周病治療薬の開発に期待

歯周病原因菌の生育に関わる酵素の立体構造を解明

岩手医科大学薬学部・阪本泰光助教、昭和大学薬学部・田中信忠准教授、長岡技術科学大学工学部・小笠原渉准教授、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)・太田和敬主任開発員らの研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟において、歯周病原因菌の生育に重要なペプチド分解酵素DPP11の結晶化を実現し、立体構造を世界で初めて明らかにした。

歯周病は、世界中で最も感染者数の多い感染症である。現在では口腔疾患にとどまらず、糖尿病、動脈硬化などの全身疾患に関与することが知られている。

歯周病原因菌は、タンパク質の分解過程で作られるアミノ酸同士が2個から数十個つながったペプチドを栄養源としており、歯周病原因菌生育時のエネルギー吸収に重要な役割を果たすペプチド分解酵素DPP11の働きを知ることで、歯周病治療薬の開発につながる。

国際宇宙ステーションでのDPP11結晶化

研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟において、歯周病原因菌の生育に重要なDPP11の高品質な結晶化を行い、X線を利用した構造解析法によって立体構造を世界で初めて明らかにした。

地上と宇宙での結晶化の検討が行われ、宇宙での結晶化の方が分解能の向上が見られ、得られた構造から、歯周病原因菌がDPP11を使って菌の外側から取り込んだエネルギー源を、どのようにして吸収できる形に変換しているかを解明することができた。

歯周病治療への期待

この研究成果を通じて、歯周病原因菌だけでなく、タンパク質やペプチドを栄養源とする糖非発酵性病原菌に対する立体構造や作用機序の解明が進むため、これまでの抗菌薬と異なる作用機序に基づく歯周病原因菌や多剤耐性菌に対する、薬の開発が期待できる。

(画像はプレスリリースより)

▼外部リンク

岩手医科大学 プレスリリース
http://www.iwate-med.ac.jp/wp-content/uploads.pdf