虫歯治療の予後不良を改善する高機能歯科材料の開発へ

再治療を繰り返さないためには

「辺縁封鎖性と硬組織誘導能を併せ持った世界初の高機能歯内療法用材料の開発・海外展開」が経済産業省の平成26年度「医工連携事業化推進事業」に採択された。

虫歯(う蝕)が進行して歯の神経(歯髄)が露出した場合、治療として直接覆ふく髄ずいを行う。また、歯髄が感染した場合は、歯髄の除去後に根管治療をする。

どちらの治療でも、予後不良から再治療が必要になるケースが多い。再治療を繰り返していると、歯が破折して抜歯となるリスクを高めてしまう。このような事態は、歯内療法用材料が次の2つの機能を備えていれば避けられるという。

歯と材料を接着させることで菌が増殖する隙間を作らない辺縁封鎖性と、歯や骨など、生体硬組織を再生する硬組織誘導能だ。

世界初の高機能の実用化へ

北海道大学歯学研究科(吉田靖弘教授)は、リン酸化プルランの開発、実用化に取り組んでいる。

これは生体硬組織のアパタイトに強固に接着する機能性多糖誘導体で、この生体接着性が口腔ケア製品や人工骨、インプラントの表面処理に応用できると期待されている。同時に、歯内療法用材料に既出の2つの機能を付与する高機能化にも有用なことがわかった。

このたび、吉田教授の研究課題が「医工連携事業化推進事業」に採択された。多糖誘導体リン酸化プルランを添加させることで、辺縁封鎖性と硬組織誘導能の機能をもつ歯内療法用材料を開発していく。

また、高機能歯科材料の実用化に向けて、カプセル状の製品形態を先行販売し、操作性や利便性を向上させる。まずは高付加価値製品のニーズが高い海外市場に向けて製品化し、次いで国内に展開する計画だ。

▼外部リンク

北海道大学プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/news/141210_pr_den.pdf