2014年10月30日、九州大学は自然科学研究機構 生理学研究所、佐賀大学、自治医科大学との共同研究で、口腔粘膜上皮に発現している温度感受性イオンチャンネルが創傷の治癒を促進していることを明らかにしたと発表しました。
(画像はプレスリリースより)
研究成果はThe FASEB Journalに2014年10月28日からオンライン版で公開されています。
口腔は、消化管の入り口です。食事等により常に色々な刺激にさらされています。食べ物の熱さや冷たさ、硬いなどの刺激は、粘膜に分布している神経によって感じています。
この刺激を受容するセンサーとして、研究者はTRPチャンネルに注目していました。
TRPチャンネルは細胞の表面に点在して、ナトリウムイオンやカルシウムイオンの通り道になっています。
口腔内に生じた傷の治りは皮膚よりも早く、瘢痕などの傷跡はほとんど残りません。この分子メカニズムを解明したのが今回の研究です。
研究グループはTRPチャンネルのうちカルシウムを通しやすく、温度によりイオンの透過量が変わるTRPV3に着目しました。
TRPV3は皮膚の培養角化細胞よりも口腔の培養上皮細胞でたくさん発現しています。
TPRV3が実際に創傷治癒に関わっているかをTRPV3欠損マウスを用いて検討しました。抜歯による創傷面積を指標にした結果、TRPV3マウスでは抜歯後の治癒が遅くなりました。
また、TRVP3は上皮成長因子の活性化に関与していることも判明しました。
TRVP3チャンネルは温度感受性イオンチャンネルであることから、口内炎等の治療に温熱療法が有効な可能性があるとのことです。
また、TPRV3チャンネルを標的とした薬剤開発が期待されます。
▼外部リンク
九州大学 プレスリリース
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2014/10/
発表文献 The FASEB Journal
http://www.fasebj.org/content/early/2014/10/27/